「いやならよけろ」地味で真面目が取り柄の私に部長が教えてくれる大人の遊び方 (ページ 2)
「珍しいですね、もう上がりですか?」
「うん、今日は早く仕事が片付いたからね。」
坂本の微笑みは自分と10も離れているとは思えないくらい屈託がなくて、智子まで思わずにこっとしてしまった。
「智子ちゃんももう今日の分終わりでしょ?さっき同期の真美ちゃんたち帰ってくの見たけど、一緒に行かなくていいの?」
「え、えぇ。わたしは彼女らとは合わないので。」
言うつもりのなかったことまでぽろぽろしゃべってしまうのはこの、人を安心させるような坂本の表情になにか魔法でもかかっているからなのだろうか。
「一緒に遊びにいきたくても、遊び方なんてわからないし。」
大学は4年間勉強しかしていなかった。
真面目だけがとりえ。
それは昔も今も変わらないことだった。
「わたしだって、みんなと同じっ・・・ようにっ、遊んだりしたいのにっー。」
気づいたら頬を涙が伝っていた。
しゃくりあげるように喋ったから言葉もとぎれとぎれだった。
「ちょ、智子ちゃん落ち着いて、わかったから。」
ちょっと慌てたように坂本が鞄を置いて智子の背中をさする。
「そんなに言うなら僕が遊び方教えてあげようか?」
とりあえず智子を落ち着かせようと軽口をたたいた。
「なーんてね、智子ちゃんは無理にそんなことしなくてもいいんだよ。」
坂本としては冗談を交えて智子をなぐさめたつもりだった、のだが。
【ほんとノリ悪いよねー】
智子の脳裏に真美たちの言葉がちらつく。
「そういう言い方しないでください。」
涙の貯まった目をごしごしこすって智子はにらむように坂本を見上げた。
「教えてください、遊び方。」
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