住宅展示場。最後のお客様を見送った後、ため息をひとつ漏らした私に…
キャラクター設定
登場人物をお好きな名前に変更できます。
milkyに掲載の小説は当サイトが契約する作家陣によるオリジナル作品であり、著作権は当サイトにて保持しています。無断転載、二次利用は固く禁じます。不正な利用が確認された場合、法的措置を取らせていただきます。
住宅展示場。最後のお客様を見送った後、ため息をひとつ漏らした私に… (ページ 1)
「ありがとうございました。」
本日最後のお客様を笑顔でお送りする。
私はハウスメーカーの住宅展示場でアドバイザーをしている。
今日は日曜日だからお客様が多かった。
住宅展示場だから、もちろん幸せそうなご夫婦やご家庭が多く、いつもならその様子を微笑ましく見つめることができるのだが、今日はきつい。
「はぁーーー。」
やっと1日の仕事が終わったという安堵についため息をついてしまう。
最後のお客様との商談が遅くなってしまったので、もう同僚たちも帰っただろうと油断していた。
「梨花、どうした??お疲れか?」
上司の桜井さんが声をかけてくる。
「桜井さん!まだいらっしゃったんですね。もう皆さん帰られたかと思いました。」
慌てて笑顔を作って元気に答える。
「部下の仕事を見守るのも仕事だからな。それより、本当にどうした?全然元気ないじゃん。」
「そんなことないです!元気ですってば!」
「嘘つくな。」
桜井さんの大きな掌で頭をつかまれる。
「無理してんの、わかんないとでも思う?話してみな。」
普段は俺様で冷たい桜井さんに、いつになく優しい目でまっすぐ見つめられるとごまかすことができない。
気がついたら涙が溢れていた。
「…彼氏と別れました。」
「なんで?結構長く付き合ってたよな?」
3年付き合った彼氏が、最近忙しいと全然会ってくれなかったこと。
久しぶりに連絡が来たと思ったら、会社の女の子と浮気していたと告白されたこと。
浮気相手のことが本気で好きになったらから別れてほしいと言われたこと。
気づいたら洗いざらい話していた。
「ずっと彼のこと大好きで、結婚するかもって思ってたのに…。なんで?私って魅力ないんでしょうか?」
そんなふうに桜井さんに泣きながら愚痴ってしまう。
そんな私をウザがるでもなく、桜井さんは根気強く話を聞いてくれた。
私が泣き疲れると、温かい飲み物を入れてくれて二人でソファに座った。
住宅展示場のリビングで2人で並んで座っていると、まるで家にいるような落ち着いた気持ちになってくる。
だんだんと気持ちが落ち着いてきた。
コメント (0)