静か、だけれども止めることのできない感情が身体を彼方へと連れ去っていく…一つ下の男と重ねる逢瀬

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静か、だけれども止めることのできない感情が身体を彼方へと連れ去っていく…一つ下の男と重ねる逢瀬 (ページ 1)

「それで、旦那さんとその後どうなの?」

金曜の夜。私は夫に何度目かの嘘をついて彼と会っている。

今日は同僚の女性たちと飲んで来る、という常套句を使ったが夫は微塵も疑っていないだろう。

そのことに、微かな不満と彼に会えるという矛盾した喜びを得ている。

「どうにもならないよ」

私は自ら話の種を蒔いておいて、どうでもいいように笑って取り繕った。

確かにどうでもいいことだ。結婚五年目の夫婦のすれ違いなんて。

彼に会えるなら理由はなんでもいい。

目の前にあるワイングラスはすぐ空になった。

彼とは仕事で知り合った。

長身でスーツが良く似合う、物静かで素敵な男性。

でも職業柄そういう男性は周囲に結構いて、私はあまり特別視したことがなかった。

初めて話したとき、彼のスマートな見た目や仕事ぶりに勝手に年上だと思っていたが、実際は一つ年下だということを知った。

独身。インドア派。猫を飼っているということも。

私たちはいつの間にか仕事のこと以外にも色々と話をするようになっていた。

食事のあと私たちは彼が住む高層階のマンションに移動した。

玄関で彼が飼っている猫が出迎えてくれる。

光沢のある毛並みのロシアンブルー。

彼女は数回来たことのある私を、怪訝そうに眺めている。

寝室のドアを閉めると彼がいきなり深く口付けてきた。

私たちはそのままベッドになだれ込む。

スカートはめくれて、内股やふくらはぎにあたる真新しいシーツのひんやりした感触が気持ちいい。

「ここ好きだったよね?」

そういって彼は私の首に唇を這わす。

「――っ」

私は言葉にならない程感じる。

普段、夫が触れもしない所だ。

夫は女性が胸か性器しか感じないと本気で思っているらしい。

彼は違った。首も背中も指すら愛撫してくれる。

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