「綺麗に飾り付けてやるよ」フリルのレースで縛られ翻弄される放課後の家庭科室 (ページ 2)
「というか、お前は欲張りすぎなんだよ。不器用なくせに、フリルを付けようとか、名前の刺繍まで入れようとしてんの?って、マジで今時、高校生にもなってハンカチに名前入れるとかレアだな(笑)」
先生が私の手から縫いかけのハンカチを取って言った。
「…あれ、お前『リンコ』って読むのか」
刺繍の名前のローマ字の下書きを見て、面白そうに私の顔と見比べる。
「笑いたければ笑えばいいですよーだ。よく、犬や猫みたいって言われますもん」
膨れっ面をしながらそっぽを向くと、
「いーんじゃない?俺、犬や猫、好きだよ、『リンコ』」
と、私の膨れた頬に指を指して笑う。
「か、勝手に名前で呼ばないでくださいっ」
私は顔が赤くなるのを感じて、吉村先生の手を払いのけながらハンカチを取り返そうと、もう片方の手を伸ばした。
「ほーら、手伝ってやるから、さっさと終わらせるぞ。先生様の貴重な放課後の時間を何だと思ってんだ」
そう言ってハンカチを返してくれた。
怖いんだか優しいんだか分からないなぁ。
向かいに座って頬杖をついてる吉村先生を盗み見しながら、ボンヤリと作業を進めていると。
「いたっ!」
「どうした?」
針で指を刺してしまった。
人差し指に赤い血の雫が膨らむ。
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