セクハラ患者から助けてくれた外科医にお礼をしにいったら…当直室で結ばれる恋 (ページ 2)

でも、患者さんを相手に声を大にして「セクハラはやめて下さい!」なんて言えるはずもない。

しかも恵ちゃん、なんて…仮にも病院スタッフに対して、下の名前でちゃん付けだなんて。

確かに私はリハビリ科の中でも若い方だけど、完全に舐められているとしか思えない。

なんだか怒りを通り越して悲しくなってきた。

「真面目にやって下さい。そうでないと退院できませんよ」

「退院なんてしなくていいよ。恵ちゃんの顔が見れるなら」

「またそういうことを…」

あなたみたいな人はさっさと退院するべきです、と毒づく。

勿論、胸の内だけで。

その時だった。

「こーら。好きな子をいじめるなんて小学生か」

突然聞こえてきた声に、ハッと顔を上げた。

入口からこちらを見ていたと思っていた先生が、部屋に入ってきたのだ。

白衣をひるがえすようにして歩く姿に、やっぱり恰好いいなあと、思わず見惚れそうになった。

「あんまりうちのスタッフにちょっかい出すと、リハビリ担当を男に変えるぞ」

私達の元にやってきた先生は、そう言って患者さんの額を指で突いた。

さすがの患者さんもドクター相手には押し黙って、ばつが悪そうにしていた。

それ以降、患者さんは私に対して変なことを言ってこなかった。

歩行練習も順調に終わった。

お礼を言わなくちゃ、と思った時には、もう先生の姿は見えなかった。

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