俺様な彼が骨折してしまい、大人しくしていて欲しいのに…
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俺様な彼が骨折してしまい、大人しくしていて欲しいのに… (ページ 1)
「どうしたの、これ」
走ってきたせいで乱れる呼吸を整えながら、目の前にある重厚なギブスを指差す。
30分程前に、「やべぇことになった。すぐ来て。」とだけ電話口で言われたので、とりあえず携帯とお財布だけ持って急いで陵の家まで一心不乱に自転車を漕いできた。
「フットサルしてたら、骨折した」
陵は、煙草をくわえたままペットボトルの水を差し出す。
私は、それを受け取り一口飲んでから
「いや、だったらそう言ってよ。何があったのかと思うじゃん。」
ここに来るまで、色んな悪いことが頭に浮かんできて、心臓が冷たくドキドキとしていた。
おかげで部屋着の短パンとTシャツでここまで来てしまった。
暗くなりかけてるのが幸いだ。
「だってやべぇもん。利き手じゃなくて良かったわ。食うのとかは何とかなるけどさ、頭とか洗えねーし。」
「それで呼んだわけね。いいけど。片手じゃ色々無理でしょ。洗濯とか。手伝うよ。」
「もちろんそのつもりで呼んだ。」
悪びれた感じなど微塵もないように吸いかけの煙草をふかしてから、灰皿に押し付け火を消した。
そんな態度にやれやれとは思うけど、素直じゃない陵が1番に私のところに連絡をくれたことは嬉しかった。
髪の毛を洗ってあげ、ドライヤーで濡れた硬めの黒髪を乾かしてあげた。
素直に私の言うことを聞いて大人しくしてる陵が可愛くて、顔が綻ぶ。
「痛み止め飲んどく?」
床に座ってまた煙草を吸ってる陵に、水と一緒に痛み止めを差し出す。
ん、と言って痛み止めを飲む陵を見て一安心した。
下着と部屋着を一組置いてたものがあったはず、と思い出し記憶していた場所を探すけれど目当てのものは見つからない。
かろうじて下着だけは見つけることができた。
「ねぇ陵、私の置いてった服どこにある?」
「しらねー。」
疲れているのか、既にベッドに倒れ込んだので、仕方なく陵のTシャツを借りることにした。
シャワーを浴びて、借りたTシャツに袖を通す。体の大きい陵のTシャツは、私のお尻まですっぽり隠す事ができたけれど、下は下着だけなので心許ない。
ま、仕方ないかと自分を納得させ、陵の隣に潜り込んだ。
いつも陵にぴったりくっついて寝るけれど、今日は痛々しいギブスに気が引けて少し離れた場所に落ち着いた。
陵はよほど疲れたのか既に規則正しい寝息をたてている。
無防備な陵の寝顔はあまり見れないので中々貴重だ。
前髪をすいて、そっと額にキスをした。
陵の肌に触れると、条件反射でいつもの陵とのセックスを思い出してしまう。
いかんいかん、と思いぎゅっと目を閉じて眠りについた。
カタンという音がして目覚めた。
真っ暗の中、枕元にある携帯を見ると深夜一時。
ふ、と隣を見ると陵の姿がない。
「陵?」
「わりぃ。起こした?」
「んーん、大丈夫。痛みは?」
「へーき。痛み止め効いてる。お陰様で。」
台所でペットボトルの水を飲む陵の元へ行き、私もそれをもらう。
空のペットボトルをゴミ箱に捨てた瞬間、するりとお尻を撫でられた。
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