好きなのに、向き合えなかったあの人とバスの中で再会して… (ページ 3)

聞き覚えのある声。

聞き覚えがあるどころじゃない、4年間頭を離れなかった声。

瞼を開くと、その人がいた。

「滝内さん…。」

「やっぱり、亜紀ちゃんだ。久しぶり。」

滝内さんは優しい目をして言う。

「隣、良い?」

そう言うと、滝内さんは狭い二人掛けシートに腰掛けた。

懐かしいタバコの匂いがした。

「ウィーンに行ったんじゃなかったんですか?」

「あぁ、そっちもあるんだけど、実はもう一つ所属してる楽団があってね。その楽団の公演が今度の日曜、東京であってさ。久しぶりに帰ってきたんだ。」

「そうだったんですね…。」

「うん。亜紀ちゃんは?」

「あ、私は、高校卒業して、大学行って、この春、社会人になりました。」

「そっか。仕事何してるの?」

「普通にOLです。音楽関係とか言えれば良かったんですけどね笑」

「良いんだよ。一所懸命練習してたじゃん。」

滝内さんがいたからだよ。

そう思ったら、何も言葉が見つからなくなってしまった。

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