アルバイト先で出会った大学生のカレ。誘われたまま家について行くと…。
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アルバイト先で出会った大学生のカレ。誘われたまま家について行くと…。 (ページ 1)
上司のパワハラで鬱気味になった私は、会社から傷病手当をもらって、休職していた。
そろそろ、1年になる。
医師からは、一向に復職の許可が出ず、焦れた私は、アルバイトを始めた。
副業禁止の会社ではなかったし、アルバイトをした程度で、クビになることはない。
それで、傷病手当を切られてもかまわないと思っていた。
もし、それで復職出来るのならば、そのほうがよっぽどよかった。
最悪、転職も考えていた。
このまま何もせずにいると、これまでに養われた私の社会性が失われそうで、怖かった。
ネットで色々とアルバイトを物色していたところへ、面白そうな求人が目に入った。
単発のアルバイトを斡旋してくれる派遣会社の求人だった。
ひと昔前は、日雇い派遣と言ったけれど、今では法律で禁止されていて、一定以上の時間勤務して、雇用保険に入る必要があるそうだ。
色々な経験が出来るだろうと思い、私はその派遣会社に決めた。
最初のうちは、どこへ行っても大したことを任せてもらえず、右も左も分からない中、忙しいところを、どうすればいいか聞くしかなかった。
それが、歯痒かった。
ある日、ラーメン店の洗い場に、数日続けて行ってくれないかと、派遣会社から連絡があった。
お昼の忙しい時間帯だけだ。
それでも、私は仕事を選ばなかった。
ラーメン店に着くと、派遣会社と自分の名前を伝える。
どこの現場も、名前で呼んでくれることは稀で、『派遣さん』と呼ばれることが多かった。
具体的な仕事内容としては、直勤のパートの女の人たちが下げてくる食器類を、黙々と洗うだけだ。
でも、休みを挟みながらでも、10日ほど続けて行っているうちに、パートの女の人たちは、私を名前で呼んでくれるようになっていた。
勤務態度がいいというので、派遣会社を通じて、その店での私の勤務時間が延びた。
開店の10時から、1時間の休憩を挟んで、学生さんのアルバイトが来る18時まで。
皿洗いだけでなく、接客やお運び、お会計も任されるようになっていた。
その頃になると、どこが追われているかを見極めて、さっさと動けるようになっていた。
その中に、不思議な男の人がいた。
週に3回ほど、開店から18時まで勤めている。
学生さんのようにも見えるけれど、年の頃は20代半ば。
でも、フリーターというには、世慣れていない感じがした。
その人は決して私に話しかけようとせず、洗い場に立っている私に洗い物を持ってくる時ですら、『お願いします』のひと言もなく、黙って器を積み上げてゆく。
きっと私のことを、『得体の知れない派遣のおばさん』くらいにしか思っていないのだろう。
そんな人もいるさ、と、私は彼を大して気に留めていなかった。
その店でバイトを始めてから、3週間が経とうとしていた。
その日、お休みをもらっていた私は、散歩がてら、少し離れたコンビニまで出かけた。
午後8時、目的はジュースを買いに行く程度のことだったけれど、ちょっとした気分転換のつもりだった。
炭酸のジュースを陳列棚から取ろうとした私は、誰かと手がぶつかった。
その人とお互いに、『あ…』という表情になってしまう。
なんとその人は、例の学生さん風の男の人だった。
彼は、ややぶっきらぼうに、それでも話しかけてくれた。
「家、この辺なんですか」
唐突に話しかけられて戸惑ったけれど、私は答えた。
「ここからは少し離れてるけど…ちょっと散歩がてら、来ただけ…」
「よかったら、コーヒー飲みませんか」
「は、はい…」
意外な申し出だった。
でも、この辺に、コーヒーを飲めそうなお店はない。
どこへ…と思っていると、彼はペットボトルのコーヒーを2本買い求め、さっさとコンビニを出た。
慌てて私もついてゆく。
コンビニの店先で、コーヒーを1本、手渡された。
彼は、ペットボトルの蓋を開けて、口を付ける。
それにつられるように、私もそうする。
「…僕たち、案外近いところに住んでたんですね」
「…そうですね」
ぽつりぽつりと話しているうちに、コーヒーはなくなっていた。
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