危険な噂が絶えない幼なじみの家で…理不尽な未来を前に過ごす幸せな今 (ページ 2)
それからがらりと世界が変わった。
高校を卒業するまでは普通に暮らして良い。
けれどもその後は、こちらの世界の住人になること。
先方の言い分は一方的で、高圧的で、容赦なかった。
「じゃあ、行かなかったら何か変わるの?」
どっちにしたってその先は決まっているなら今は、せめて今だけは楽しく過ごすべき、なんて思うのは私がまだ子供だからだろうか。
潤と同じ景色なんて、もう絶対に見えないのだろうか。
そう思うだけで、胸の奥がずきんずきんと痛む。
「本当、お前はかわんねーな」
ため息交じりの声は、セクシーに掠れていて心臓がドキリと跳ねる。
「人の心配する前に、自分の心配でもすれば?」
ぶっきらぼうな言葉と、私を見つめる熱い眼差しとの間に歴然とした温度差があるのを見抜けないほど馬鹿じゃない。
二度目は自分から唇を重ねた。
「花凜。俺はお前と幸せな未来なんて誓えない」
「いらないよ、そんなもの」
私だっていっぱいいっぱい考えた。
これまで、二人で楽しく遊んでいたけれどもう今のままではいられない。
優しい潤は私を連れて危ない世界に行くことはないだろう。
どんなに私が切望したとしても。
だから、もう、将来まで望むのはやめた。
欲しいのは分け合いたいのは、ただ、今こみ上げてくるこの熱だけ。
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