とても優しいのにいやらしい、先生と複雑な関係 (ページ 2)
雨がタクシーの窓を叩きつける音を聞きながら、ぼんやりといろんな考えに思いを巡らせる。
いつから、こんなに心を委ねるようになったんだっけ。
いつから、こんなずるい女になったんだっけ。
「久保先生、」
インターホンを押して、声をかける。
「いらっしゃい。とも。」
仕事が忙しかったのか、目の下にクマができている。
少し眠たそうな笑顔で私を抱きしめてくれる優しい腕。
間接照明の灯る少し暗めの部屋。
濃いめのブラウンで統一されたソファや家具。
久保先生の、匂い。
「久保先生、聞いてくださいよ、酷いんですよ、」
敬語になるのは、恋人ではないから。
「また泣かされたの。慰めてあげよう」
しょうがないなぁ、と目で言いながら、久保先生はひどく優しく私の唇を塞ぐ。
眠気のある先生の唇は、暖かい。
「くちびる、乾燥してますよ」
「ともにリップ分けてもらうの待ってたんだよ」
お互いの息遣いが聞こえるほどの距離で、時々唇を触れあわせながら話す。
「とも、抱かせて。」
真っ直ぐに目を見ながら言われると、断れないことを彼は知っている。
「それ目的で呼んでくれたんですか?」
「違うよ。でも抱きたい。抱かせて。」
「…もう、」
返事の代わりに、先生の唇に噛み付いた。
あぁ、いつから、こんなに、この人に溺れてしまうようになったんだろう。
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