私なんて…頑なだった私を見つめてくれた後輩くんと深夜のオフィスで
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私なんて…頑なだった私を見つめてくれた後輩くんと深夜のオフィスで (ページ 1)
定時を過ぎたオフィスには、キーボードを叩く音と空調の微かな唸りが響く。
「リコさん、こっちの入力は終わりましたよ」
張りのある爽やかな声が室内の静寂を破った。背中合わせの席から報告を受け、私も振り返らないまま返事をする。
「ありがとう、カイ君。明日の受注票も出してもらえるかな」
「了解しました」
文句も言わず雑務をこなす彼は、七つ年下とは思えないほど頼りになる。
自分の仕事は早々に片付いているから早く帰れるはずなのに、最近、私の残業を手伝うことが多い。
「それ終わったら、今日は帰りませんか?」
人懐っこい笑顔が後ろから私を覗き込んだ。女性社員から熱い視線を受ける彼自身の丸い瞳は、いつも眩いほどに輝いている。
「カイ君は先に帰っていいよ。私はもう少し、残るから」
私はキラキラした視線を振り解いて、パソコンに向き直った。
「まだ残るつもりですか? リコさん、頑張り過ぎですよ」
「別に頑張ってないよ。仕事しか取り柄がないだけ」
顔も体も並より少し下。男の人にモテたことなんてない。
辛うじて経験はあるけれど、何年も前に事故のように一夜を過ごしただけ。35歳、独身、彼氏なしの非モテ女。
そんな私が唯一、自信を持てるのが仕事なのだ。人手不足のうちの部署には業務があり余っている。一人でコツコツと仕事を片付けていく時間は、孤独だけれど充実感を与えてくれる。
「仕事ができる女性は、素敵ですね」
そんなことを言われて舞い上がるほど、私は若くもないし素直でもない。
「仕事ができてキレイな女性は、の間違いでしょ」
「そうですね。間違えました。仕事ができてキレイなリコさんは素敵です」
「何のためにそういう嘘つくの?」
溜息交じりに振り返ると、鼻と鼻がぶつかるくらいの距離に彼の顔が迫っていた。
「嘘じゃないです。俺はリコさんを仕事ができるキレイな女性だと思ってます」
力強く断言されても理解できない。一重の目、低い鼻、薄い唇、顔のどのパーツを見ても、私の顔は『キレイ』とは程遠い。
「視力は……」
「どっちも1.5あります」
「じゃあ、視覚野が……」
「脳ドッグは受けたことないけど、問題ないはずですよ」
にこりと笑った顔は少年のように純粋無垢。
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