夕食前の台所、目隠しをされた私は後ろから身体中をまさぐられる (ページ 2)

 気持ちいい。

 もっと、触ってほしい。

 ──足りない。

「やっ、健一……!」

「なーに?」

 余裕が消えかけたかすれ声が返ってくる。

 なのに欲しい熱は与えられないまま、中途半端な刺激だけが膣内に与えられて腰が揺れる。

 もっと、もっと。

 思いに比例するように身体は熱くなっていくのに、健一は愛撫する指をそのままに美奈のあちこちにキスを落としてそれ以上をしてくれない。

 ふさがれた視界がもどかしさを助長して、気持ちいいのと、もっとして欲しいのとで、美奈の感情が大きく波打って、爆発した。

「目隠し、も、やだあっ。ちゃんとしてよ……っ」

 泣きそうになりながら訴えた。

 実際に泣いていたかもしれない。

 声音でそれは健一にも伝わっているはずなのに、美奈の中を悪戯していた指も、美奈を覆っていた身体も、遠ざかってしまった。

「……っ」

 支えを失った身体がシンクをつかんでいた手ごと床に崩れ落ちる。

 フローリングの床がひんやり心地いいのに疼く身体には毒で、尻を高くあげた姿勢のまま美奈はぐちゃぐちゃになった気持ちを持て余していた。

 もう自分で触ってしまいたいくらい身体が熱くて、漏れる吐息は気持ちいい刺激を欲して潤んでいた。

「は……っ、や、あ、ああああああああ」

 吐息で熱をやりすごそうとした瞬間、ずん、と、強い衝撃が美奈の身体を貫いた。

 高く上げた腰を大きな手が固定して、健一の熱が美奈の奥深くへ挿入ってきたのだ。

 求めていた熱に喜びの色をたたえた矯声があがり、もう美奈自身にもコントロール出来なかった。

 暗いはずの目の前がチカチカと光って、気持ちいいに頭の中が支配される。

 強く腰が打ち付けられる度に、理性が一枚一枚剥がれていく。

 気持ちいい。

 もっとして。

 いじわるしないで、そこ、もっと。

 息も絶え絶えな中で、何度も訴えていた。

 健一のものが美奈をいっぱいにして、こすって、奥を突くのがたまらないほど気持ちよくて。

 ぶわりと汗が噴き出して身体がより密着する。

 美奈の熱と健一の熱が溶け合って、頭がおかしくなってしまいそうだった。

「あっ、や、健一、きもちいいっ、あぁ……っ、いっ、イっちゃう、あ、や……あああああっ」

「みな……っ、美奈っ、っぅく」

 互いの肌が打ち合う音と、獣のような荒い息遣いが響く。

 健一の腰遣いが一層激しく早くなり、美奈の意識が白くはじけた。

「あ、っは、あ……」

 ぎゅうと後ろから抱きしめられて首筋や耳、頬から顔じゅうにキスを落とされて、身をよじった拍子に目を覆うネクタイが外れた。

「……おかえりなさい、健一」

「ただいま、美奈」

 自分を抱きしめて笑ったのは、当たり前だけど夫の健一で、美奈がスカートをまくられただけの状態なら彼もズボンを下ろしただけの間抜けな姿で、思わず笑ってしまった。

 わかっていても姿がみえなかったのは不安だったらしい、ほっとした美奈はぺしんと健一の額を叩くと自分からキスをして笑った。

「ご飯食べたら、もう一回シて? 今度はベッドでちゃんと裸になって、お互いの顔がみえるようにね」

-FIN-

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