誕生日にどうしても会いたいとごねる年下彼氏と疲れている社会人彼女の癒されひともんちゃく
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誕生日にどうしても会いたいとごねる年下彼氏と疲れている社会人彼女の癒されひともんちゃく (ページ 1)
「今日は僕の誕生日なんです、覚えてますよね?」
初めてできた年下の彼氏である雪匡は、ネチネチと『今日のデートを取り消すのは絶対許さない』ことを遠回しに言ってくる。
自分の誕生日という特権を存分に振りかざして。
電話口で思わず大きなため息が出そうになったが、さすがに嫌味に聞こえるかもしれないと思いグッとこらえる。
「会いたいのは私も山々なんだけど……」
「ミキさん、僕と今日会えない理由はなんですか?訳を聞かなきゃ飲めません」
「実は私今日で3徹目なんだ、さすがに寝たい」
「ひどい!僕より睡眠優先ですか!仕事入れすぎです!頑張りすぎです!ワーカーホリック反対です!」
「そうはいっても納期は待ってくれないし」
「ねぇ!?僕と仕事どっちが大事なんですか?!」
若い恋愛をしている女の子みたいなことを言いながら、電話口で悲しげな声を雪匡は上げる。
「断固会いたいです、俺は!」
「断固寝たいです、私は」
「今日は俺の誕生日……」
「わかってる。わかってるから、それはもう」
「ミキさん、ちょっと前から思ってたんですけど、僕のこと……そんなに好きじゃなかったりします?」
そんな本気で泣き出しそうな声を聞けば、疲労よりも罪悪感が勝ってくる。
「そんなことはないよ」
「違うでしょ。そこは、『雪匡くん大好きだよ』でしょう!」
「はいはい、好きだよ」
「好きなら会ってください……一瞬でいい、寝ててもいい、化粧だっていりません、何の用意も不要です」
「うん」
「ただ会って、抱き締めさせてくれれば」
日頃尽くしてくれる彼氏にそこまで言われては、もう断れない。
「わかった。じゃあ私はどこへ行けばいい?」
「玄関先」
「へ?」
間髪入れずにガチャンという音が玄関先から聞こえてきて、一瞬呼吸が変なリズムになる。
「ちょっと!?」
「好きだから……来ちゃった」
合鍵を顔の前でちらつかせながら、にっこりと雪匡は笑った。
綺麗な顔に似合ぬ低い声が、自宅の廊下に落ちる。
物腰や言葉は丁寧なのに、こういう面倒くさい彼女のような性格のアンバランスな彼。
生意気でうんざりするのに、その顔を見るとなんでも許せてしまうから、悔しい。
徹夜続きで自分の顔のクマがどうなってるかも把握してないし、メイクもボロボロだから会いたくなかったのに。
「もうバカ……せめてもう少し時間ちょうだいよ……」
「一秒でも長くあなたといたい」
こんな状態では会いたくなかったのに。
やっぱり実際に会うと、嬉しくて、ドキドキしてしまう。
自分の中の女の部分みたいなとこが動き始めるような、そんな感覚。
彼はホルダーにかけてあったスリッパを外し足を突っ掛けて、足早に近付いてくる。
「あぁもうたまりません、会いたかったです、ミキさん」
「待って待って!シャワー浴びさせて!仕事から帰ってきたばっかりなの!」
「関係ない」
強引に腕を掴まれたと思ったら、次の瞬間には胸を揉まれた。
首元に彼の髪の毛があたる。
もぞもぞと胸の間に顔を埋めていく。
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