家出した私を捕まえたのは意地悪な幼馴染。私は援助交際を疑われて……

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家出した私を捕まえたのは意地悪な幼馴染。私は援助交際を疑われて…… (ページ 1)

「何をやってんだ、お前」

 低い聞きなれた声に――私、美波の肩はびくっと震えた。

 落ち着けと自分に言い聞かせても、年上の男のそれは慣れるものじゃない。

「べつに」

 私はネカフェのドリンクバーのメニューを選ぶふりをして、眼前の幼馴染、雅人君から眼をそらす。

 雅人君は私をキツイ視線で睨む。呆れたようにため息をついて「ガキかよ」と悪態をついた。

「お前、今年受験生だろ。家出してネカフェ生活していたとかシャレになんねぇぞ」

「……っ」

 突き放した言い方に胸がずきんと疼く。

 目がかぁっと熱くなって、泣きそうになったけれど唇を噛んで堪えた。

 五歳年上の雅人君は、学生時代成績が良くて、運動神経も良くて、ルックスだって抜群。私の同級生は「雅人先輩と幼馴染なんてずるい!」と羨ましがった。

 でも、私はあんまり雅人君が得意じゃなかった。

 雅人君の口調はいつも冷たい。

 それは誰に対しても、ではなく、私に対して、だ。特に尖っている……ような気がする。

 特別、好かれるなんて贅沢なことは望まない。

 でも、他の人と同じくらい普通に、会話をしてくれたらいいな、と――私の家族みたいに、私を嫌わないでいてくれたらよかったのに、と思ってしまう。

「おい、聞いてんのかよ?」

 ぼんやりしていると、雅人君が苛立たしそうに詰め寄る。

 怒りに満ちた相貌は、私を「出来が悪い娘」と蔑むお父さんに似ていて……すっかり大人になっている彼は怖かった。

「わ、私が何をしたって、雅人君には関係ないよ……!」

 私は咄嗟についでいたウーロン茶のカップを掴み、その場を去ろうとした。けれど、

「何言ってんだよ、高校生のガキのくせに!」

 雅人君がガッっと私の肩を掴む。その衝撃でウーロン茶がはね、ばしゃっと雅人君にかかってしまった。

「あっ!」

 ウーロン茶に濡れた雅人君は一瞬フリーズしたけれど……驚いた表情から、すうっと感情が抜けていく。

 ――やばい、怒られるっ!

 全身から血の気が引いた。

「お客様、大丈夫ですか?」

 ネカフェのスタッフが私達を訝しげに見比べ「トラブルですか?」と尋ねた。

「問題ありません。騒いでしまってすみません。もう出て行きますね」

 雅人君は物腰柔らかく微笑む。先ほどまでの態度とは一変し「美波、荷物を持ってきな」と優しく言った。

「え……だって……」

 尻込みすると、雅人君は私の耳元でささやく。

「お前が未成年だってこと、もう受付に言ったから。今日ここに泊まるのはもう無理だぞ」

 びくんと心臓が跳ねた。

 あの家に帰らないといけない……その事実に、眼の前が真っ暗になっていくのを感じる。

「会計は済ませておく。逃げるなよ」

 有無言わせない雅人君の指示に、私は従うしかなかった。

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