「…覚悟してね?」美容師の手によって美しくも淫らに花開く時
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「…覚悟してね?」美容師の手によって美しくも淫らに花開く時 (ページ 1)
「ねぇ、そこの君!」
せっかくの休日、ウンザリ気分なのは、この人混みのせいだけではない。
本当なら、この人混みの中を、自分も楽しく歩いていたはずだ。
いつものように、あいつと腕を組んで。
けれど、あいつは、この人混みの中に消えて行った。
一言、「ごめん」とだけ言い、可愛らしい女の子と腕を組んで。
「ねぇ、君ってば、今、時間ある?」
ウンザリ気分に拍車をかけるように、しつこい男の声。
失恋したばかりとはいえ、すぐナンパに応じるほどヤケになってはいない。
「しつこいなっ!」
振り返りざまにそう言うと、やたらお洒落な格好の男性が立っていた。
「ようやく振り返ってくれた」
整った顔立ちで、はにかんで言われると、追い返そうとする言葉の続きが出ない。
私が口をモゴモゴさせていると、彼は名刺を差し出してきた。
「ヒロ…さん、美容師?」
「そっ、俺、駆け出しの美容師なんだ。実はカットモデルを探してて。君、すごく可愛いから声かけちゃった。お願いしたいんだけど、どうかな?」
「はぁ…」
カットモデルか…。
それこそ、失恋してヤケになってるわけじゃないけど、気分転換にはなるかも…。
「…別にいいですけど…」
我ながら、愛想なく答えたと思ったが、
「わぁ、本当!?嬉しいなぁ!」
あまりに素直に喜ぶヒロさんの顔に、今日初めての笑みが零れた。
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