目が覚めたら隣に馴染みの店のイケメンバーテンダーがいて… (ページ 2)

「で、最後にゴールデンドリームを飲んで……」

「リコさんは酔いつぶれた、と」

「それから、カイ君が仕方なく自分の部屋に私を運んだ」

「そう。そんで、服も顔もシワだらけになるって、リコさんは全裸になって、寝た。ベッドは一つしかないから、俺も隣で寝た。以上」

全く記憶がない。そもそも、いつも通りスマホのアラームで起きたら、

自分は素っ裸で隣に睫毛の長い寝顔があるなんてこと、現実だとは思えない。

でも、目の前には朝の光の中でもカッコいいバーテンダー。

「本当にごめんなさい!ご迷惑をおかけしました」

「俺は別に何とも思ってないよ。あ、リコさんの体って、エロいなぁとは思ったけど」

でも、指一本触れてないよ、とカイ君がおどける。

たぶん、私が気まずくならないように、わざと軽いノリにしてくれているんだ。

「お詫びはちゃんとしますから。とにかく、今は仕事に行かないと」

「えー。せっかくだから、このまましようよ」

お腹が空いた時の猫のように、カイ君が体をすり寄せてきた。慌てて布団の中に逃げる。

「いやいや、酔った勢いならともかく、シラフでは無理でしょう」

「俺、リコさんと酔った勢いでしたくないもん」

カイ君が布団に潜り込んで、私の体を抱きしめた。言葉の軽さと裏腹の真剣な眼差しにクラクラする。テキーラをショットで飲んだ時みたい。

「一晩、がんばってガマンしたんだから、意地悪しないでよ」

「でも、仕事……」

「ちょっと前のドラマみたく、休めばいいじゃん」

「私、そのドラマ見てないし」

口ではそう言いながら、私は起きあがってスマホを手に取った。会社の番号を選び、発信する。

一回の呼び出し音の後、電話が繋がった。私は淡々と昨日から嘔吐が止まらないと嘘をつき、仕事を休みたい旨を伝えた。

「インフルエンザやノロだと大変だから、病院で結果出たら電話して」

「分かりました」

「じゃあ、お大事に」

上司の嫌味を覚悟していたから、拍子抜けする。

罪悪感がチクリと胸を刺した。

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