体から始まる恋。偶然出会った行きずりの男性と、恋に落ちた私

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体から始まる恋。偶然出会った行きずりの男性と、恋に落ちた私 (ページ 1)

その男性は、「タカヤ」と名乗った。

 おそらくはいい加減な偽名だろう。

 でもそれは、私も同じこと。適当に「理香」と名乗る。

 ふらりと立ち寄った店で、偶然、隣に座っただけ。ただそれだけの、行きずりの関係。

 そんな相手に、本当の名前を告げるはずがない。

 けれど。

 なんといえばいいのだろう。そう……なんとなく、波長があった、とでも言えばいいのだろうか。

 短い会話を交わしたあと、私たちはどちらからともなく席を立ち、店を出た。

 そのまま、ともに手近なホテルへと向かったのだ。

 彼に口説かれた、というわけではない。はっきりと誘われてすら、いない。

 それでも、抵抗感はなかった。私にとっても、ごく自然なことと思えた。

 低く、優しい彼の声。抱きしめられた時に感じる、かすかな匂い。すべてが心地よい。

 不思議。本当に不思議。

 頭より先に体が、理性より感覚が、彼を求めている。

 私に触れる仕草、彼のキスのしかた。抱きしめる腕の力強さまで。なにもかもが気持ちいい。

 どうして彼は、こんなにも私が好きなことを知っているんだろう。

 いや、もともと私が好きなやり方なのではなく、今、彼にされて初めて、こうされるのが好きだと、私自身が自覚したのかもしれない。

 彼の手がゆっくりと、私の着ているものを一枚ずつ脱がせていく。

 そして私たちは、生まれたままの姿で抱き合った。

 彼のキスが肌の上を這う。首すじから鎖骨へ、さらに下へと。

 胸の先端に触れられた時、じんと疼くような快感が全身を駆け抜けた。

「あ……」

 ため息みたいなかすかな声がもれた。

 重い瞼を少しだけ開けると、まっすぐに私を見つめる彼と目が合う。

「やめて……。そんなに見ないで」

「どうして?」

 私の耳元に唇を寄せ、タカヤがささやく。

「こんなにきれいなきみを、見ないでいられるはずがないだろう」

 まるで数十年前の恋愛映画のような、古臭い陳腐なセリフ。

 でも、それが、彼の口から出ると、胸の芯に切なく甘く突き刺さる。

 やがて彼の手が、私の体を音もなくすべりおりていった。

 そうして触れられたそこは、もう、恥ずかしいくらいに濡れそぼっている。

 秘めやかな肉のひだをかき分け、長い指が侵入してきた。

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