二人だけの時間が流れる海の家―思い切って重ねた唇から始まる夏の記憶 (ページ 2)

「でも、その水着、似合ってるから、誰にも見せないのはもったいないかもね」

利人さんに水着姿を見られている。

そう思ったら、急に体が熱くなった。

「利人さんに見せるから、いいもん」

不意に、気持ちが溢れてしまう。

「俺に見せるための水着だったの?」

どこか冗談めかしてる利人さんに、本気だって伝えたい。

わたしは思い切って、キスをした。

唇に唇を押しつけるだけのキス。

でも、他に方法が思いつかなかった。

「千星ちゃん…だめだよ。こんなおっさんにそういうことしちゃ」

わたしの肩を押し退けて、利人さんが困った顔で笑う。

「俺、モテないんだから、本気になっちゃうよ」

「嘘つき。利人さん、モテるじゃん」

お客さんの女の子に連絡先をもらってるところだって、何回も見ている。

可愛い水着で利人さんを誘惑する女の子を見るたびに、どんなに嫉妬したか。

「わたしだって、利人さんを誘惑したい」

「じゃあ、してみせて」

そう言って笑った利人さんは、いつもと違う色っぽい顔をしていた。

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