アイドルの彼を思うがあまり、言いたくないこともつい言ってしまい…

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アイドルの彼を思うがあまり、言いたくないこともつい言ってしまい… (ページ 1)

カチャッ、と鍵を開ける音がして、辰巳が帰ってきた。

伊達眼鏡とニットキャップ。

一見彼が人気アイドルグループ「today」のメンバーだとはわからない。

「ただいま」

「お帰り。今日もお疲れ様」

玄関まで行き出迎える。

彼に鍵を渡したのは、時間が空いたら気軽にうちに来れるようにするため。

ファンという立場を越えて付き合い始めたものの、時間が不規則な辰巳とは出掛ける約束もままならないし、カメラに追われる身なので会える場所も自ずと限られてくる。

今日も収録が早まったと夕方連絡があり、私の部屋に帰って来たのだった。

「見たよ週刊誌」

「today」の数名と、女性アイドルたちとのスキャンダルを目にしたのは、立ち寄った本屋で見かけた週刊誌だった。

お互いのグループのメンバー数人で夜通し遊んだのだと、写真と共に記事は伝えていた。

彼の職業柄、あることないこと記事にされる覚悟はある。

でも急に今夜も会えることになり、気持ちの整理ができないまま、「今日もあの子たちと会ってきた後だったりして」といういじわるな言葉が口をついて出た。

「はぁ?なんの話」

「みんなで飲んだんでしょ、合コンみたいに。今日も遊んでたんじゃないの」

仕事で疲れてるのに、わざわざ会いに来てくれたのに、傷つける言葉を言いながら自分も涙で視界が歪む。

「それいつの話だよ」

「知らないわよ。周りにかわいい女の子いっぱいいるもんね。こないだだって歌番組で隣に」

ドン、と彼が私の顔のすぐ横の壁を拳で叩き、壁に押し付けられた。

「なにソレ?」

眼鏡を外した瞳の奥には、私しか映っていない。

「俺がハルカ以外の女に手だしたとでも思ってんの」

そう言った唇が触れそうなほど私に近づき、思わず目をつぶる。

肌はまだ触れてないのに息づかいと体温を感じる。

「俺は、おまえしか見えてないよ」

彼の舌にとらえられたのは唇ではなく左の耳たぶだった。

「んんっ!」

不意討ちに思わず声が漏れる。

甘噛みした後ピチャピチャと音をさせながら耳の縁をなぞり、耳全体を口に入れて舐め回し始めた。

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