空き部屋でギラつく雄になった先輩に貪られる余裕のないオトナの情事 (ページ 6)
課の報奨旅行で訪れた温泉宿で、飲みすぎてはめを外してしまった。
ただそれだけのことです。
生真面目な先輩は、宙を見つめてしばし黙り。
他に良策もないと結論を出したんだろう、やがて重々しくうなずいた。
「だな、忘れよう」
「立花、これ開発と日程調整しといてくれない?」
「始めてますよ、後で候補日を出します」
「さすが、サンキュ」
週明け、いつもの職場で、いつものやりとり。
ワイシャツの先輩は涼やかで、あの獣モード全開だった姿が、嘘のようだ。
なんて考えていると、目が合った。
頭の中が読めたんだろう、先輩は珍しく、ぱっと顔を赤らめ、小声で毒づく。
「…忘れるんじゃなかったのかよ!」
「私の台詞です」
席についても、先輩は悔しそうに、頬を火照らせたままで。
私はそれを、楽しく眺めた。
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