深夜の来訪者に扉を開けば挨拶ごと彼に唇を奪われて―私だけが知るアイドルの顔 (ページ 2)
いつもは当たり前のように残業に付き合う私だけれど、今日は定時に会社を抜け出した。
飛び乗った電車には、帰宅を急ぐサラリーマン、OLのみならず、ショウくんの所属するアイドルグループ「Melty Kiss」のコンサートに向かうファンたちでごった返していた。
Melty Kissはデビュー二年でその人気はうなぎのぼり。
いまや、コンサートのチケットを手に入れるのも難しいほどのトップアイドルの一つとして認知されるほどになっていた。
堂々とVIP席で見ればいいのに。チケット準備するよ?
と、ショウくんは言ってくれるけれど、あえて断り、なんとかショウくんには秘密で自力で手に入れたチケットを握り締め、コンサート会場へと向かう。
楽しい時間はあっという間に過ぎて行った。
独り、部屋に戻って楽しかったコンサートの余韻に浸る。
本当、ショウくん、すっかりアイドルになっちゃったなぁ……。
髪を乾かしながらそんなことを思っていたら、ピンポンと呼び鈴が鳴った。
深夜の来訪者にドキドキしながら扉を開けると、ジャージ姿のショウくんが立っていた。
「いらっしゃ……ん――っ。んんんっ」
挨拶すら交わす時間が惜しいのか、玄関を後ろ手で閉めた直後、言葉ごと彼の唇に奪われる。
それは、深い深いキスで、ショウくんの舌が縦横無尽に口の中を駆け回っていく。
びちゃびちゃという水音が、静かな部屋に響いていく。
飲み込み切れない唾液が、口の端から頬を伝って流れていった。
「ミホが煽ったんだろ?」
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