オフィスの一角で彼に頬を両手で包み込まれて…意味深な後輩に振り回される (ページ 2)
備品の整理に思いの外時間がかかってしまい、時計を見ると既に定時を過ぎていた。
これから書類の整理をするとなれば、今日は残業決定だ。
デスクに戻ると、既に数人しか人はいなくて、その中に彼の姿もあった。
彼も残業かな。
彼のいる方向を少し意識しながら、パソコンを起動させた。
作業を進めていくにつれ、徐々に人の数は減って行った。
もう少し時間がかかりそうだと思い、オフィスの奥の一角の部屋のコーヒーコーナーに入ると、テーブルの端にもたれかかって携帯電話を見てる彼の姿があった。
あたしは一気に体温が上昇してしまい、何故かそのまま引き返したい気持ちになっていた。
だけど、そんな事したら返って不自然で気持ち悪いだろうし、「お疲れさまです」と、平然を装いながらマシーンにカップをセットした。
なんとなく彼の視線を感じなくもなくて、緊張している事を悟られないようにする事に必死になってしまう。
コーヒーがゆっくりと注がれている音だけが響くこの小さな空間で、あたしの心臓は今にも飛び出してしまいそうだった。
「ミルク使います?」
この距離感でなければ聞こえないような声であたしに尋ねる彼の声は、あの時よりも業務的であったけれど、それだけ動揺してしまうくらいに、あたしは彼の一挙一動に過敏になっていた。
「あ、は、ハイ」
後輩に向かって思わず敬語を使ってしまう程動揺してしまっている。
彼がミルクを差し出すので、震えないようにしながら手の平を差し出した。
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