オフィスの一角で彼に頬を両手で包み込まれて…意味深な後輩に振り回される

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オフィスの一角で彼に頬を両手で包み込まれて…意味深な後輩に振り回される (ページ 1)

彼がこの部署に異動してきてもうすぐ半年が経とうとしている。

毎日同じ事の繰り返しだったあたしの生活が、彼の一言でこんなにも変わってしまう。

あれは歓迎会と称した飲みの席。

みんなが程よく出来上がっていく中、ふとあたしの横に座り、特に話をする訳でもなく酒を飲み続けていた。

「佐倉君、今日の主役があたしなんかの横で飲んでちゃだめだよ。」

そう言うと、彼がゆっくりとこちらに顔を向けた。

こんなに近くで顔を見たのは初めてで、その白い肌と、精巧なガラス玉のような茶色い瞳は、思わず息を飲む程綺麗だった。

その薄くて形のいい唇が開くその時までの数秒間が、こんなにも長く感じた事はないと思う程。

「何で?カナさんの横にいちゃダメなの?」

彼にとってはなんの意味もなさない言葉だったのかもしれない。

どうしてこんなに心臓が高鳴ったのか、自分でも不思議だった。

下の名前で呼ばれる事に慣れていなければ、あたしの名前を知っていた事にも驚きを隠せなかった。

その後すぐ、彼は酔っぱらった上司に引っ張られて別のテーブルへと連行されてしまったのだけど、高鳴った鼓動はどういう訳か収まる気配は見せなかった。

それから、あたしの視界に彼が入る度にこんな状態は続く事になる。

6つも年下の彼のあの言葉で、いい年した女の世界は常に地面から数センチ浮き上がったような世界へと変わってしまった。

誰にも話す事もなく、何か行動を起こす事もない。

久しぶりに抱いたこの感情の高ぶりを密かに楽しむだけ

それだけで十分だと、

そう思っていた。

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