遊郭という籠の中で過ごす最初で最後の幸せな一夜 (ページ 3)
祥吉とは、家が隣同士だったのもあり、よく遊んだりした。
年頃になってからは、照れと恋心が邪魔をしてお互い、あまり口きかずという感じだった。
(随分、立派になっちゃって…)
懐かしさと嬉しさが胸にドッと押し寄せてきて、思わず目元にじんわりと涙が溢れてくる。
「で…でも、何でこんな所にいるの?」
「夢…黙っていなくなっただろう?俺すっごく悲しくてさ…独り立ちできる年になってからこっちで仕事探して、それからずっとお前の事、探してたんだよ」
祥吉のその言葉に、夢は耐えきれず涙を頬に零す。
「祥吉っ…ごめん…ねっ」
すると祥吉がスッと手を伸ばし、夢の頬の涙を指で優しく拭う。
「夢…やっと、やっと会えた」
「うん…」
「俺ね、夢の事ずっと好きなんだよ。チビの頃から、嫁さんに貰うなら夢って決めてたんだっ!」
「っ!!!………」
(あぁ、嬉しい…嬉しいよぉ……でもっ、もう………)
夢の胸がギュッと痛んだ。
遅かった…。
夢は一生この歓楽街に囚われた、籠の中の鳥だ。
きっと、夢に会うために沢山の銭をコツコツと貯め、ようやっとの事で見つけて半ば賭けるように、ここまでやって来たのだろう。
(こんな私のために…)
そう思うと胸が切なくなり、涙が溢れてくる。
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