「流石にもう、隠せないんだけど」頻繁にノートを借りにくる彼の悪いところ
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「流石にもう、隠せないんだけど」頻繁にノートを借りにくる彼の悪いところ (ページ 1)
「いつも悪いな」
「そう思っているなら、少しは勉強してよ」
目の前に座る彼に返事をして、私は重い溜息を吐いた。
学校の同級生として知り合った啓介は、ことあるごとに課題やノートを見せてくれと私を頼りに来る。
ノートを借りに訪ねてきた彼を部屋に入れるのも、もう今月だけて三回目だ。
「大体ね、講義をちゃんと受けていればノートなんて借りなくて済むんだから」
「梢のノートは分かりやすいから、あると助かるんだよ」
大方、講義中は居眠りか何かで時間を潰しているのだろう。
そう邪推して呆れた視線を投げた私に、啓介は人懐こい笑みを向けた。
不意打ちの言葉に、私は思わず視線を逸らす。
こういうところが、彼の悪いところだ。
さらりとした真っ直ぐな言葉は、思わず人をどきりとさせる。
それに加えて、彫りの深い顔立ちとどこか気だるげな雰囲気も、学校の女生徒から評判が良かった。
正直なところ、私の立場を羨ましがっている人は何人もいるだろう。
「それなら、もっと頭の良い子に見せてもらえばいいのに。例えば……」
「だから、梢のが良いんだって」
照れ隠しに、中くらいとしか言えない自分の成績を盾にする。
頭に浮かんだいくつかの名前を口にするより早く、少し口調を強めた啓介がそう言った。
普段は見せない強情さに思わず彼を見やると、啓介ははっとした顔をして、それから恥ずかしげに視線を逸らした。
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