「他の男に、傷なんてつけられやがって」女扱いしてくれない先輩に怒られ嫉妬をぶつけられる (ページ 3)

たまたま通りかかったのだろう、普段見慣れない相手と話す私に怪訝な表情を見せる佐山さん。

好きな相手に見られたくないものを見られた動揺と、どうか勘違いしてほしくないという焦りから、私は最悪な一言を口にしてしまった。

「な、何でも無いですよ!」

「はあ?」

どうみても物々しい雰囲気だった相手にそう言われれば、誰もがますます不審に思うものだろう。

訝しげな視線を私の手首に留めた瞬間、佐山さんは今まで見たことの無いような表情を見せた。

「『何でも無い』わけねぇだろ、このバカ!」

ビリビリと鼓膜を揺らす大声。

思わず固まった身体が、逞しい佐山さんの腕によって引き寄せられる。

その腕の誘うままに飛び込んだ胸板は男らしく、はっとして見上げた佐山さんの視線は私の後方へと向けられていた。

「行くぞ、七海」

「えっ、あ、はい!」

男性を睨み付けていたのだろう、鋭い視線がそのままこちらを向いた。

こんな時なのに、背中に回された腕に触れているところが熱い。

廊下を歩く間の佐山さんは何も言わなくて、私も何を言えばいいのかと迷ったまま歩くしかない。

今はほとんど使っていない資料室のドアを開けると、佐山さんは私を中に押し込んだ。

終業後である上に元々人が来ることの少ない場所であることも相まって、資料室の中はしんと静まり返っている。

鍵が閉まるがちゃんという派手な音を聞いた瞬間、今の今まで強張っていたことすら気付かなかった身体からふっと力が抜けた。

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