「他の男に、傷なんてつけられやがって」女扱いしてくれない先輩に怒られ嫉妬をぶつけられる (ページ 2)
結局今日は仕事中もそんなことばかり考えて、終業後も家に帰る気にもなれず、休憩スペースで一人たそがれる羽目になった。
重いため息を漏らしそうになった瞬間、他部署の男性社員がひょっこりと顔を出す。
「七海ちゃん、お疲れ様」
「あ、どうも」
以前飲み会で一緒になった時から何かと誘いをかけてきてくれる彼は遊び人風で、正直に言うとやや苦手な分類の人間だ。
馴れ馴れしく近い位置に腰掛ける男性に、私は気まずそうに視線を逸らした。
「ねえ、この前のお誘い考えてくれた?」
「申し訳ないんですけれど、やっぱり忙しくて……」
「そんな事言わないでさぁ」
こういう時は早く逃げるに限る。
そう思って謝りながら立ち上がったのが気にくわなかったのだろうか、左の手首をぐっと掴まれた。
「ちょっと待ってよ」
「やっ!」
信頼していない相手に触れられたことにぞっとして、思わず強い力で振り払う。
反射的に爪を立てられたのか、手首に醜いミミズ腫れが走った。
「あ、ごめん……」
正気に返ったのか、男性が申し訳なさそうに眉を下げる。
立ち去る為に顔を上げた私の耳に、よく馴染んだ低い声が響いた。
「七海?」
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