彼には彼女がいる。分かっていた、だけど…抑え切ることなんてできなくて…
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彼には彼女がいる。分かっていた、だけど…抑え切ることなんてできなくて… (ページ 1)
にわか雨が降った後のアスファルトの臭い…
あの頃を出して泣きそうになる。
初めての独り暮らし。
うるさい親から離れて思い切り羽を伸ばしていた。
大学で知り合った佳代から
「理美さぁ~バイトしない?」
とメール。
佳代のバイト先の系列の焼肉屋で人手が足りないとか。
「する~ちょうどバイトしようと思ってたとこなんだよね~」
「ほんと?助かる!じゃ、明日夜10時に面接ね」
え?夜10時?
携帯の画面を何度確認してもそう書いてある。
しかもよく考えたら焼肉屋。
髪とか服とか臭いつくじゃん。
後悔したけどもう遅い。
* * * * *
面接。ちょっと頼り無さそうな店長。
「時間は夜10時から午前3時まで。帰りは危ないから基本俺が送ってく」
「でもわたし緑町なので自転車で来たいんですけど」
「なら、送りは渉な」
そう言って紹介されたのが初めての出会いだった。
* * * * *
「お前今日もチャリなの?」
「うん、雨降んなくてよかった~」
そう言っていつものように原付に乗った渉の肩につかまる。
「「しゅっぱぁ~っつ」」
明け方のハイテンションで原付と並走していると突然のにわか雨。
「コンビニに避難しようぜ」
「冷ったぁ~い」
少し濡れても午前3時だ。体が冷える。
「焼肉臭ぇし、雨臭ぇ」
わたしの髪を無造作に掴んで言うと
「寒ぃんだろ?家寄ってけ」
確かにここからだと渉の家の方が近い。
躊躇していると
「何もしねぇよ。俺彼女いるしな」
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